公開: 2023年3月26日
更新: 2023年5月19日
2022年2月、ロシアのプーチン大統領は、以前から米国のバイデン大統領が警告していた通り、ロシア軍に対して、ベラルーシ南部から、国境を超えて、ウクライナの首都、キーウに向け、進軍を命令じました。当初は、陸軍の戦車部隊だけでなく、空軍の空てい部隊にも攻撃命令が出されていました。突然の攻撃で、ウクライナ軍は防戦体制が整わず、混乱しました。その間に、ロシア軍は、キーウ近郊まで攻め込みました。しかし、攻撃開始から1週間ほどが過ぎると、ロシア軍の進軍は、ほぼ完全に止まりました。侵攻開始前に、米国のバイデン大統領が警告していた、ロシア軍は1週間程度でキーウを制圧するかも知れない、とする予想は外れました。
プーチン氏がウクライナ侵攻を計画し始めたのは、2021年後半になってからのようです。プーチン氏は、キーウ陥落には1週間ほどで終わると考えていたようです。ですから、侵攻するロシア軍への武器弾薬や兵員の補給などは、慎重に計画されていなかったようです。ロシア軍の侵攻に対して、ウクライナ軍は、徹底抗戦の構えで反撃をしました。キーウに向かって進軍していた戦車部隊の進軍が突如、停止したのは、ウクライナ軍の激しい抗戦があったからのようです。ウクライナ軍は、ドローンを使って、ロシア軍戦車の位置を探り当て、遠方からミサイルで攻撃を加えたようです。
プーチン氏が、ウクライナ侵攻が必要だと考えた理由は、この10年間、ウクライナの反ロシア勢力がNATOへの接近を試みていたからだと、考えられています。ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアは、直接、NATO加盟国であるウクライナと国境を接するため、国土の防衛が容易ではなくなると考えたからだと言われています。つまり、ロシアは、NATO同盟諸国との直接衝突を「怖れていた」のです。戦争は、そのような国家の脅威が引き金になると、研究者は指摘しています。ロシアのウクライナ侵攻は、まさに、そのような例でした。
研究者が考える戦争の理由には、さらに、国威の誇示と、国益の追求があると言われています。プーチン氏の場合には、過去の行動から、旧ソ連領のチェチェンでの戦争や、ジョージアでの戦争、そしてウクライナ南東部のクリミア半島の占領など、ソ連の崩壊後、低下していたロシアの国威を高める狙いでの、近隣諸国・地域への侵攻が、これまでも見られています。プーチン氏は、かつてのロシア皇帝が行った国土拡張の戦争と同じように、ソ連の崩壊で失った地域を取り戻そうとする意志が、根底に強くあるように見えます。
NHK BSスペシャル、ロシア 衝突の源流、2023年2月25日放送(BS103)
この番組の中では、ケンブリッジ大学のリチャード・レポー(R. Lebow)教授の、国家が戦争を始める理由は、おそれ(Fear)、誇り(Spirit)、そして国益(Appetite)であるとする説を、紹介しています。